プロトタイプ「Hallucigenia 01」

プロトタイプの位置づけ

プロトタイプ「Hallucigenia 01(ハルキゲニア・ゼロワン)」は、研究のためのプラットフォームである。研究自体が端緒についたばかりであるため、その仕様、構成については手探り状態であり、あくまでも実験体である。今後、Hallucigenia 01を使って様々な制御技術や応用動作、ソフトウェアを開発し、将来の実用的な技術仕様を見極めるための研究が継続される。

同時に、このプロトタイプは、ハルキゲニア・プロジェクトがもたらすものを人々に伝えるためのショーピースでもある。ハルキゲニア・プロジェクトの技術コンセプトを、まずはかたちにして多くの人々に新しい考え方、技術開発の方向性を提示したい。

8本の脚による高度な機動性能の実現

Hallucigenia 01 は、ホイールがついた8本の脚(ホイール・モジュール)を持つ、全長537[mm]、全幅331[mm]、1/5スケールの実験試作車である。各ホイール・モジュールは、ホイール旋回用(ステアリング)、本体上下動作用(リフティング)およびホイール・モジュール旋回用(スウィング)の3つの関節を有する。つまり、このホイール・モジュールを8脚もつHallucigeina 01は、全32個のモーターを搭載した多関節ロボットとも言える。全関節を制御することで、Hallucigenia01は、その場回転や、8輪すべてのホイールを真横に向けることによる横移動走行、また、リフティング関節とスウィング関節のリアルタイム制御による、車体を水平に保ったままの登坂や段差の乗り越えなどの高度な機動性能の実現に成功した。

分散協調システムの導入によるフラットなフロアの実現

Hallucigenia 01 のホイール・モジュールは、その各々が小脳に相当するコンピュータ(サテライトコンピューター)により制御されたロボットである。本体床下には、ホイール・モジュール制御用の12個のサテライトコンピューターが、神経系である体内LANにより、大脳に相当するメインコンピュータと直結。すべてのコンピューターがセンサと連動することで、多関節のHallucigenia01のリアルタイム制御を実現している。

このように、分散協調制御システムとホイール・モジュール構成を導入することで、Hallucigeina 01 は、バッテリーや制御系はもちろん、駆動系などのすべての装備を床下に実装し、フラットなフロアを実現、汎用プラットフォームという技術コンセプトを具現化した。車体上部に実装されたデザインは、このフロアがもたらす多様なデザインの一例である。上部を簡単に脱着できる構造にすることで、将来、レスキューなど特殊車両や福祉車両、物流用などとしてのデザイン展開を可能にしている。